介護保険法上、介護施設を開業するためには、法人を設立する必要があり、介護施設を運営するには、国や自治体が定めた基準をクリアしなければなりません。その基準のひとつが法人格を有することです。したがって個人事業主やフリーランスとしての営業はできません。
法人といっても様々な種類がありますが、介護サービス事業者の法人形態として多いのは「株式会社」「合同会社」「NPO法人」の3つです。
この記事では「結局どの形態で作ればいいの?」と考えている方に向けて「株式会社」「合同会社」「NPO法人」の3形態の特徴や費用、メリット/デメリットについて解説します。
メリット・デメリット・費用の比較と解説
株式会社
メリット | デメリット | 費用 |
認知度が高く信頼を得やすい | 設立費用が高い | 242,000円~ |
株式発行による資金調達が可 能(拡大しやすい) | | |
1 人でも始められる | | |
株式会社は事業の拡大を狙いたい場合に向いています。資金調達の面では銀行からの借り
入れのほかに、株式の発行で資金を得ることが可能です。
一般的に知名度のある法人なので信用を得やすく、人員を増やすにあたっては、求人での人
員拡大もしやすいです。また、会社の機関(取締役会や監査役など)を会社の規模に応じて
設定することができます。
株式会社の設立者は発起人が1 名以上、役員が取締役1 名以上と定められていて、設立ま
でに1週間〜2 週間程度かかります。費用は実費だけでも20 万円以上かかるので、その点
は他の2 形態と比べるとデメリットです。
合同会社
メリット | デメリット | 費用 |
設立手続きが簡単で速い | 新しい組織形態で認知度が低く、信頼を得にくい | 100,000円〜 |
設立費用が比較的安価 | 事業の拡大には不向き | |
小規模で始められる | | |
合同会社は最近(平成18年~)できた新しい組織形態で、自分一人または小規模で事業を
行う場合にはおすすめです。居宅介護支援事業の場合には、ケアマネ一人だけで独立する
ことも多いと思います。そのような場合には合同会社が向いています。
メリットとしては株式会社と比べて手続きが簡単で費用も安い点があげられます。公証人に定
款の認証をしてもらう必要がないため、定款認証手数料(株式会社の場合には約54,000
円)がかかりません。設立手続きにかかる実費は、登録免許税の60,000 円です。自分で設
立手続きを行うのであれば、実費60,000 円のみで設立できます。設立者は発起人が1名
以上、役員が取締役1 名以上、設立にかかる期間も1週間〜2 週間程度と、株式会社と同
様です。ただ、組織としての一般的な知名度はまだないので、求人募集では信用が得にくい
点はデメリットです。
NPO法人
メリット | デメリット | 費用 |
非営利組織なので一般的な介護事業のイメージとマッチする | 設立には一定の人員確保が必要(最低でも理事3人、監事1人が必要) | 0円〜 |
補助金を取得しやすい | 設立には時間がかかる | |
法人税の支払いがない | 主務官庁等の承認が必要 | |
設立費用が安い | 非営利組織の為、売上や利益の話をしずらい | |
| | |
NPOは非営利法人なので、介護事業の公的なイメージとマッチしやすいというメリットがあり
ます。また、株式会社よりも一般的な信用度は高くなります。
財務的な面では、NPO法人は法人税の支払いがないため、キャッシュフローが循環になりま
す。行政や財団からの補助金も得やすく、送迎車などが取得できるため、運営がしやすい点
もメリットとして挙げられます。
デメリットとしては、人員を確保する必要があり、最低でも理事3名、監事1 名が必要になりま
す。また、NPO 法人を設立するには主務官庁等の許可が必要となるため、設立に5か月程
かかる点もデメリットです。すぐに事業を始めたい場合には不向きでしょう。
また、NPO法人は非営利組織であるため、売り上げの話はしづらい傾向にあります。株式会
社や合同会社のように営利組織であれば、社長の経営理念や、利益を出すための活動方針
に従業員が従ってくれますが、NPO法人は話がまとまりにくい傾向にあります。
話し合いの場が何度も開かれ、多数決による意思決定が多いため、革新的なことやリスクを
負う改革は難しいです。
費用についてですが、設立自体は0 円~可能です(対外的な信用を考慮すると0 円での設
立は好ましくありません)。
まとめ
上記の内容をまとめると以下のようになります。
株式会社→事業拡大を狙いたい人にオススメ
合同会社→1 人または少人数で事業を展開したい人にオススメ
NPO法人→一般的な信用を重視する場合にオススメ
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