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ふくろう大学

​滋賀県立大学名誉教授である沢田裕一氏を講師として招き、新聞記事を教材に政治、経済、社会などの諸問題について広く解説・討論することにより、社会を生きるための様々な基礎知識を身につけてもらう。それがふくろう大学です。

毎週水曜日開講 午前11時〜

最新の講義

地球温暖化:①山火事被害ー20年で倍に、高温・乾燥ー燃え広がる原因、大火災が温暖化進める悪循環
②リビア洪水ー温暖化引き金、偏西風:異例の蛇行、低気圧が停滞
世界で森林火災が拡大している。今年は、約100人の死者がでているハワイ・マウイ島の火災のほか、カナダ、ギリシャ、ポルトガル、チリなど各地で大規模な山火事が相次ぎ、焼失面積は大きく増える見込みだ。森林火災発火の直接の原因は落雷や火の不始末など様々だが、高温と乾燥した気候だと自然鎮火しにくく、燃え広がりやすい。気候変動が森林火災の規模を拡大し、深刻化させていることは間違いない。森林は温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を吸収し、貯蔵する機能を持つが、火災が起きればCO2は再び大気中に放出される。シベリアでは、火災で永久凍土が解け、温室効果がCO2の28倍もあるメタンが発生している。森林火災が温暖化を悪化させ、さらなる火災を呼ぶ。専門家は、この悪循環によって「加速度的に温暖化が進む」と警鐘を鳴らす。

9月20日(水)

​これまでの講義

①BRICS拡大、湾岸産油国も、資源国と関係強化、経済力狙いか
②G20サミット、存続優先・妥協の首脳宣言

9月13日(水)

①新興5カ国でつくるBRICSは8月24日、サウジアラビア、エジプト、アルゼンチンなど新たに6カ国の加盟を認めた。米国との対立を深める中国が拡大の旗を振ってきた経緯があり、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国を加えることで、米欧主導の国際秩序に修正を迫る狙いが透ける。②インドの首都ニューデリーで開かれた主要20カ国首脳会議(G20サミット)は9月10日、世界経済の重要課題などを討議して閉幕した。ウクライナ情勢を巡る対立が参加国の分裂を招きかけたが、グローバルサウスと呼ばれる新興・途上国が妥協を働きかけ、首脳宣言が採択できない事態を回避した。今回の首脳会議について、「グローバル秩序の形成という使命を果たさず、いかに『合意』を得るかを優先したサミットになった」と指摘できる。
脱炭素へ変革「産業革命以来」、気候テック・ベンチャー投資熱、脱炭素ユニコーン企業次々、ITから人材流入、米の27歳「気候変動、我々の世代に深刻な問題

9月6日(水)

気候テックとは、温暖化問題の解決につながるテクノロジーのことだ。原因となる温室効果ガスの排出を減らす技術だけでなく、温暖化の影響への備え(適応策)を進めたり、気候変動への理解を深めたりする技術やサービスも含まれる。国際エネルギー機関(IEA)の試算では、温暖化対策の国際ルール「パリ協定」の目標達成に必要な費用は約8千兆円。気候テック企業は、これをビジネスチャンスとみる。IEAによると、既存の技術でも排出の半減はできるが、残り半分はまだ実証段階にある技術に頼る必要がある。「今後10年間に大きな技術革新の努力が必要」だとする。気候テックは、「ビッグ・テック」と呼ばれるIT大手などで大量解雇が相次いだことで、そこにいた人材をひきつける。
①78年前、終戦後の東京。父母やきょうだいを空襲で失い、焼け野原の自宅跡地に座り込む12歳の少女がいた。落語家の故・初代林家三平さんの妻でエッセイストの海老名香葉子さんだ。戦争孤児だった海老名さんは親戚や他人の家を転々とし、バラック住まいや農家への買い出しなど、戦後の苦難の多くを身をもって経験した。
②戦時下で朝日新聞編集部員だった所武雄が自著「狂った時代」(1955年刊)に、当時陸軍中将だった石原莞爾と交わした会話を書いている。ミッドウェー海戦から8カ月後、戦局は悪化しつつも、東京への大規模な空襲は始まっていなかった。石原は「東京はやがて焼野原になるぞ、一木一草なくなるね」と語り、こう続けた。石原「この戦争はだね、このまま行ったら必ず負ける。止めるならまず今のうちだよ。どうだね。朝日新聞は(紙面)全面を埋めて戦争反対をやらんかね。(中略)全面をつぶして戦争反対をやってみろ、歴史上の村山(当時の朝日社長)になるよ。そうおれが言ったと伝えてくれよ」。所「そんなことをしたら、朝日新聞は潰されてしまいますよ」。石原「なあに、そら潰されるさ、潰されたって、戦争が終わってみろ。いずれ敗け戦さ。朝日新聞は復活するよ。従業員は帰って来る。堂々とした朝日新聞になる。どうだ。そう伝えて欲しいな」。社に戻った所は、朝日の重役に伝言したが、「口をつぐんだきり何も言わなかった」という。
太平洋戦争:①戦争孤児だったわたし、海老名香葉子さんの記憶、幸せな記憶あったから生きられた. 
②「朝日は戦争反対やらんか」、社長へ石原莞爾からの伝言

8月23日(水)

原子力発電・中間貯蔵施設、
上関に建設検討、中国電が発表、関電と共同開発
町長:調査受け入れ前向き

8月9日(水)

中国電力は8月2日、山口県上関町に原子力発電所から出る使用済み核燃料を一時保管する「中間貯蔵施設」の建設を検討すると発表した。関西電力と共同開発する。建設の可否を判断する調査の実施を同日、町に申し入れた。西町長は受け入れに前向きで、今後、町議会に諮り、対応を決める。計画が実現すれば、青森県むつ市にできた施設に続いて二つ目となる。中間貯蔵施設の確保が急務だった関電には、課題解決への糸口となりうる。中国電も島根原発2号機の再稼働をめざしている。全国の原発では使用済み核燃料がたまり続けており、国は電力大手が中間貯蔵施設を共同利用するよう促していた。しかし、両社による中間貯蔵施設の建設は、原発施設内の貯蔵プールにたまり続ける使用済み核燃料を、一時的に保管する急場しのぎの策といえる。なぜなら、国が描く核燃料サイクルがまわっていないからだ。
バイデン米大統領が6月22日、インドのモディ首相を国賓として招待し、厚遇した。米国がインドに接近を図った背景には、インドとの関係強化を通じて中国やロシアを牽制したい思惑がある。多領域にわたる今回の関係強化は、長期的な将来を見据えたものといえる。②インドの人口が、推計で世界一になった。超大国にくみしない独自外交、続々と輩出するIT人材ーー。先が見通せない世界で、その存在感は高まっている。この国はどこへ行くのかーー。「インドと日本は価値と利益を共有する」みたいな議論が日本にありますが、はっきり言って幻想です。「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)、日米豪印4カ国(クアッド)による首脳会合の枠組みもできましたが、実は価値も利益もあまり共有していません。それでも、14億人を超える人口は中国を抜いて世界一になり、経済成長に伴って軍事力も伸びていく。日本が付き合わない選択肢はないのです。(防衛大学校教授・伊藤融氏)

7月26日(水)

①米印接近中ロを牽制、
米印は「かつてない信頼関係」
②素顔のインド、実利重視の自
主独立外交
人新世ー新たな地質年代提案へ、人間の活動ー地球史揺るがす、「人新世」モデルにカナダの湖

7月19日(水)

46億年の地球の歴史の上で、人類の痕跡が残る時代を区分するーー。こんな提案を地質学の専門家たちが国際学会に提案した。地質年代とは惑星としての地球の歴史を地層の特徴に応じて区分した呼び方のこと。現在は新生代第四紀「完新世」と呼ばれる。人新世は、現在の「完新世」に続く新しい地質年代の区分として2009年から検討されてきた。地質年代を決める国際地質科学連合の下部委員会に人新世作業部会が設けられた。昨年末の投票で、23人中22人が「地質年代としてあるべきだ」として支持した。人新世の始まった時期は、1950年ごろを採用する。世界中の地層や氷床から50年代に急増した米ソの核実験によるプルトニウムが見つかるという。この時期、世界の人口や、プラスチックやコンクリートなどの人工物の生産量も爆発的に増えていることもある。
安倍氏銃撃から1年、旧統一教会の今:①解散請求、長引く調査、法令違反の有無探る、②統一選、教団信者電話かけ、「関係遮断」自民本部方針届かず、③解散請求「生き残りかかる」、信者「本質変わらないのでは」、④2世の存在忘れさせない、当事者自ら踏み出した支援

7月12日(水)

安倍氏銃撃から1年。社会を大きく揺るがした教団問題の今を追う:①文部科学省は教団への解散命令を裁判所に請求することを視野に、調査に着手。宗教法人法の「報告徴収・質問権」を6回にわたって行使するとともに、多数の元信者らから証言を聞き取り、請求に向けた証拠として積み上げる作業を続ける。調査開始から7カ月が経つが、請求に踏み出せないまま事態は膠着状態に陥っている。②自民党は昨年10月、党運営指針を改定し、反社会的とされる組織・団体に関して「その活動を助長すると誤解される行動は厳に慎む」と明記した。それを受けて各県連も、教団との「関係遮断」を進めるため、「誓約書」を取ることを決めた。しかし、誓約書をまとめたのは約20の道府県にとどまり、また誓約書自体も「今後の関係を断つ」という各議員の署名を求めるだけで、過去の実態解明はおざなりだ。
①ロシアの民間軍事会社「ワグネル」創設者のプリゴジン氏は23日夜、「軍幹部の悪事を止めなければならない。抵抗する者は壊滅させる」として、ロシア軍への反乱を宣言した。これを受けてプーチン大統領は24日にテレビで演説し、「いかなる騒動も国家と国民への致命的な脅威だ」と批判。「防衛の手段は厳しいものになる」と強い姿勢を示し、ワグネル戦闘員に投降を呼びかけた。②プリゴジン氏が武装蜂起を宣言した直接の原因は、ロシア国防省とのいがみ合いだ。だが、プーチン氏にとっては、プリゴジン氏がウクライナ侵攻の理由であるウクライナの「非軍事化」「非ナチ化」を否定したことの方が重大だっただろう。ウクライナ軍の反転攻勢が始まり、ロシア側は一枚岩となって戦闘に専念しなければならないタイミングでの騒動となり、戦況への影響は避けられない。

7月5日(水)

香港国安法3年、統制の果てに:①「香港政府息苦しい」公務員次々離職、同僚がSNS監視・密告、法抵触恐れ萎縮、②「若者を本土の企業へ」進まぬ構想、「言論制限厳しい」中国不信根強く、③匿名でも海外からでも、真相報じたい

6月28日(水)

ワグネル、ロシア軍に反乱:①南部で司令部占拠、首都300キロ部隊通過、プーチン氏投降を要求、ベラルーシに「借り」、②身内に否定された「侵攻の大義」
香港で民主派弾圧が進んだ国安法(国家安全維持法)の施行から3年。表立って声にできない市民の葛藤が、3回にわたり朝日新聞で報告された:①公務員が不足、役所は大行列。公務員が辞めていく理由について、国安法による職場環境の悪化が挙げられる。SNSなどでの発言も上司や同僚に監視され、密告や相互監視がはびこる職場の雰囲気を嫌う人は少なくない。大量欠員に伴い、業務負担が増えたこと、国安法に触れるのを恐れ、何事も上司の決裁を仰ぎ、行政効率も急速に低下しているという。②香港の若者を中国本土に送り込み、現地の企業で働いてもらうーー香港政府がめざしているのは、中国政府が進める経済圏「大湾区」構想を構成する中国広東省の企業で、香港の若者に働いてもらうことだ。中国政府は大湾区構想について、「中国と香港、マカオの若者に対する愛国主義教育を通じ、国の歴史や民族文化の宣伝を強化する」とする。経済面での融合をテコに、政治的な香港の取り込みにつなげようとする意図を隠していない。
台湾統一工作、中国「経済圧力」を追う:①台湾パイン「育て、依存させ、殺す」、中国の国有企業「増産して」一転、突然の禁輸、②親中派への投票依頼、資金源の闇、「中国で商売するなら応じざるを得ない」

6月21日(水)

 中国は台湾の「平和的統一」を掲げ、巨大市場を武器とした幾層もの経済的圧力をかけ続けている。台湾社会はその影響力に揺すぶられ、「戦わずに台湾を奪う」ねらいだと警戒する。台湾で見えるその工作手法を追う:台湾産パインの対中輸出は、中国とフィリピンによる南シナ海の領有権争いをきっかけに、2015年以降に急上昇した。輸出急増の直接の原因は、中国国有企業から入った大量の高値注文だった。「台湾の農民を助けるため、台湾産パインを大量購入せよと中国政府から命じられている。生産量を増やしてほしい」と中国国有企業に頼まれ農地を拡大した。だが、その1カ月後、収穫期の間近に中国による台湾産パインの禁輸措置に襲われた。16年の蔡政権の誕生後、中台関係は一転して悪化し、中国は新たに定めた食品輸入登録制度に基づき、昨年末までにほぼすべての台湾産の水産品など約2350品目の輸入を禁じた。
『終わらなかった歴史』、フランシス・フクヤマ氏に聞く:①権威主義国の台頭、米社会の分断激化、民主主義は危機に、②ウクライナの今、自由を得るため人類の努力続く

6月14日(水)

(インタビュー)冷戦崩壊という歴史的な節目に、ベストセラー「歴史の終わり」で世界の論壇に登場したフランシス・フクヤマ氏。それから30年、歴史は終わらず、勝利を宣言したはずだった民主主義と自由主義は新しい挑戦を受けている。中国の台頭などで、20世紀末とは異なる地点に立つ人類が、いま抱かえる問題について話を聞いたーーベルリンの壁が崩壊した1989年は人類の歴史の中で、本当に特別な瞬間でした。もう戦争がこの地上からなくなるかもしれないと、世界中が本気で期待していました。しかし、恒久平和は訪れませんでした。重要なのは、あの時から、世界中で自由への渇望が続いていることです。世界中の人が、独裁者の下で生きたいとは思っていないはずです。それに目覚めたのが、89年だった。自分たちは力を持っているのだという事実に、世界の人が目覚めたのです。
アジア安全保障会議=シャングリラ・ダイアローグ開催、①会談拒む中国に米「懸念」、「台湾海峡紛争なら壊滅的」、②東南アジア諸国 紛争リスクを警戒、米中へ「妥協と共存、唯一の道」

6月7日(水)

英国のシンクタンク、国際戦略研究所(IISS)が主催するアジア安全保障会議が6月2日~4日、シンガポールで開催された。参加国の最大の懸念は米国と中国の対立。米国は中国の高圧的な姿勢や閉鎖性を強調し、地域各国に連帯を呼びかけたが、中国も激しく応酬し、米中国防相会談は見送られた。ただ、台湾などでの紛争は「壊滅的」な結果をもたらすだけに、対話の模索も続いた。東南アジア諸国の国防相らは、対立が紛争へとつながることへの懸念とともに、「妥協と共存が唯一の道だ」と述べ、米中の協調に期待を込めた。
G7サミット:①首脳ら原爆資料館を訪問、核軍縮の努力強化、ウクライナ支援の継続確認、②ゼレンスキー氏広島に、反攻へ正当性訴え
①主要7カ国首脳会議(G7サミット)が19日、広島市で開幕した。G7首脳はまず、広島平和記念資料館を訪問し、原爆死没者慰霊碑に献花、黙祷した。サミットでの議論は広島市内のホテルで行われ、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が発表された。20日午後からはインドなど招待国の首脳も出席し、議論の成果をまとめた首脳コミュニケ(声明)を採択した。②ゼレンスキー大統領が対面で参加したことで注目が集まり、「核を絶対に使ってはならない」という強いメッセージを被爆地の広島から出せた。ゼレンスキー氏が広島に来た目的の一つは、グローバルサウスの代表格であるインドやインドネシアなどの首脳との会談だ。特にインドのモディ首相との会談で、ゼレンスキー氏から和平に向けた譲れない条件を伝えた上で、モディ氏から「解決のためにできることは何でもする」という言葉を取り付けたことは、ウクライナ側の大きな外交成果だろう。

5月24日(水)

日韓首脳シャトル外交:①徴用工踏み込んだ首相、岸田氏「徴用工心が痛む」、氏「歴史問題脱却必要」、②日韓首脳会談、今後の展望は
①岸田首相は7日、就任後初めて韓国を訪問し、尹大統領とソウルの大統領府で会談した。日韓の最大の懸案だった徴用工問題をめぐり、首相は会談後の共同記者会見で「私自身、当時の厳しい環境のもとで、多数の方々が大変苦しい、悲しい思いをされたことに心が痛む思いだ」と述べた。共同記者会見では、福島第一原発の処理水をめぐり、韓国専門家の視察受け入れ、広島の平和記念公園にある「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」に両首脳が参拝することなどが表明された。②尹大統領の訪日からわずか2カ月での「シャトル外交」の再開は、日韓関係改善に向けた一歩だ。岸田首相は安全保障や経済など幅広い分野での対話再開を「成果」として協調した。19日から広島で開かれるG7サミットに合わせた日米韓首脳会談に向け、日韓関係をさらに前進させるための具体策が期待される。(神戸大学・木村幹教授など)

5月17日(水)

憲法と安全保障:①敵基地攻撃ー政府「決着」、議論なき9条・歯止め形骸化の危機、②防衛費に建設国債、歴代政権の答弁から一転

5月10日(水)

①政府は敵基地攻撃能力として中国や北朝鮮に届くミサイルを持つと決めたが、憲法9条が許容する必要最小限の「専守防衛」に収まると言えるのかどうか。政府が憲法議論をしないのは、そもそも敵基地攻撃は必ずしも違憲ではないという立場を取るためだ。憲法改正や防衛力強化への賛否とは別に、国家権力を縛るための憲法が議論もなく有名無実化されようとしている。②政府は建設国債から防衛関連予算に4千億円強をあてる方針を示した。自衛隊と海保の連携強化を掲げ、海保の施設や船の建造費が建設国債の対象になっていることを理由にしている。首相も、防衛財源に国債をあてることには慎重だったが、増税による財源確保に反発する積極財政派議員に配慮したためだとみられる。
「断交」半世紀、台湾とは①民主化で強まった政治的な主体性と住民の台湾人意識②中国は許さぬ姿、威嚇や情報戦で「有事」はすでに

 4月26日(水)

①この30年あまりで台湾内部は大きく変わった。故・李登輝氏が初の民選総統に選ばれた96年以降は4年に1度、総統を直接選挙で選び、投票のたびに自分は台湾を治める主人公、台湾人であるというアイデンティティが強化されてきた。中国から渡ってきた人も、もともと台湾にいる人も、先住民も、等しく台湾人になりつつある。台湾は国際機関から排除され国民国家としての主権は制限されているが、政府と軍隊を持ち、内部には主権が存在する。住民が政権を選べるようになり、確固たる政治的な主体性が生まれた。②中国は、民主的に運営される政治体として自信を深める台湾社会を、許してはならないと思っている。中国と台湾はかつて、ともに「中国」としての正統性を争う存在だったが、その軌道から台湾は離れてしまったからだ。中国は、経済的圧力や軍事力による威嚇だけでなく、情報戦や認知戦を通じて、住民の自信を砕こうとしており、その意味での「台湾有事」はすでに始まっている。東アジアを非民主的国家中国が支配するのを良しとせず、同時に、戦火は困るという人が大多数でしょう。台湾有事を起こさないためには、米国は国内政治の分断を復旧し、国家としての安定を取り戻すこと、日本は一定の防衛力を増強し抑止力を高めることに加えて、経済力を取り戻すことが非常に重要です。台湾やアジア各国が中国への経済依存を引き下げる受け皿になれるかどうか、日本の経済力の復活にかかっています。(台湾研究者:若林正弘丈早稲田大学名誉教授)
日本の安全保障ー戦前の安保3文書から考える①軍拡招く国防方針、米・ロを仮想敵国に身の丈超えた目標②軍独断と非開示、抵抗し抑制した民主政治の時代

 4月19日(水)

①日露戦争の後、日本は『帝国国防方針』を作成、『用兵綱領』、『所要兵力』と合わせた3文書により、陸・海軍を統御する最高基準としてきました。帝国国防方針には軍拡を抑制することも含まれていましたが、陸軍はロシア、海軍は米国を仮想敵国とし、その両方と同時に競うという身の丈を超えた軍事力を持とうとする国防方針でした。また文書を作ったこと自体が軍拡を誘発した面もありました。②国防方針は事実上、政府や議会には知らせずに軍が作成したものでした。当時、首相だった西園寺公望は、情報が自らに開示されていない現実を逆手にとり、自分は文書全てを認めたわけではないと主張するための足場にしました。議会や政党が軍拡に反対した歴史は重要です。二大政党が交代で内閣を組織した「憲政の常道」の時代には、国防方針に掲げられた軍拡目標の達成は実現しにくい状態でした。30年には、海軍軍令部が反対する中で浜口内閣がロンドン海軍軍縮条約に署名しています。重い軍事費負担にあえいでいた当時の経済状況から見れば妥当な選択でした。しかしその後の経過は、「政党政治は国防をないがしろにするものだ」と訴える勢力が優勢になり、民主政治が存在感を示した時代は32年ごろ終わりました。(歴史学者:加藤陽子東大教授)
台湾総統訪米、米台会談・中国刺激避ける

 4月12日(水)

台湾の蔡英文総統は4月5日、訪問先の米カリフォルニア州で、マッカーシー下院議長と会談し、米台の緊密さを強調しつつも、中国への過度の刺激を避ける姿勢に徹した。危ういバランスの上で互いの関係を結んできた米国、中国、台湾。それぞれの戦略的な思惑が、会談を舞台に交錯した。蔡氏にとって、今回の訪米には3つの課題があった。台湾に対する米議会超党派の支持を強化すること。一方で中国を過度に刺激しないこと。そして、台湾世論に広がる対米不信ー台湾有事を懸念する人々が、ウクライナに米軍を送らない米国に不信感を募らせたーを減らすことだ。一方、民主党政権の対中政策を「弱腰」と批判してきたマッカーシー氏にとっても、地盤とするカリフォルニア州での会談は、対中強硬を支持者にアピールする現実的な落としどころと映ったようだ。
①デフレは貨幣的現象なので金融政策で解決できるーー。黒田総裁は10年前に2%のインフレ目標を掲げ、「2年で達成してみせる」と宣言した。ところが10年たってもゴールに至らず、異次元の金融緩和で物価を上昇させて経済の好循環をめざす「国家的社会実験」は失敗した。日銀が国債を買い支える「財政ファイナンス」で政府の借金拡大にも歯止めがかからない。②日銀は異次元の金融緩和の名の下に大量の国債を買い支え、政府は日銀が買い続けてくれないと、毎年度の予算編成さえできない状態に陥っている。つまり日銀の出口戦略は、国家財政の再建戦略でもある。これを成し遂げるには、まず借金依存の財政に慣れきった政治を立て直すことが必須だ。政治家にとっては有権者の反発を招く増税や歳出削減より、日銀にリスクを負わせる方が都合が良い。この政治の「壁」をどう突き崩していくのか。重荷を抱かえた新総裁の行く道は遠く険しい。(記者解説:編集委員・原真人氏)
日本銀行ー「10年の宴」後始末へ
社会実験」失敗ー負の遺産にどう道筋をつけるか
出口戦略はー国家財政再建へ、政治との協調難題

 4月5日(水)

①徴用工問題をきっかけに戦後最悪とも言われた日韓関係は、3月16日に首脳会談が実現、積み重なった懸念を一掃するかのように関係改善に向けた取り組みを一気に決めた。会談では「シャトル外交」との再会、日韓安全保障対話や日韓次官戦略対話の早期再開で一致し、新たに日韓間で経済安全保障に関する協議を立ち上げることを決めた​②岸田首相は3月21日、外遊先のインドから秘密裡に、ロシアによる侵攻が続くウクライナを電撃訪問、多くの民間人が殺害されたブチャを訪問した後、キーウでゼレンスキー大統領と初めて対面で会談し、連帯と支援を伝えた。翌22日にポーランドを訪問・首脳会談、23日に帰国した。
①日韓首脳会談、懸念を一掃
②首相、ウクライナ訪問、サミットにらみ極秘裏に

 3月29日(水)

全国で関連死を含む死者・行方不明者が2万2212人となった東日本大震災から3月11日で12年を迎えた。津波の被災地で住まいやインフラの整備がほぼ終わり、被災者の心のケアなどに課題の重点が移る一方、東電福島第一原発事故の被災地で復興の遅れが際立つ。放射線量が高くて住めないとされた帰還困難区域の一部で、昨年から避難指示が解除され始めたが、地域の再生にはなお課題が山積する(2)日本銀行黒田総裁、さいふぉの定例決定会合:日本銀行は3月10日、黒田総裁にとって最後となる定例の金融政策決定会合を開き、緩和を現状通り続けると決め、会合後の会見で黒田氏は「金融緩和は成功だった」と統括した。
東日本大震災12年、避難なお3万人、地域の再生課題

 3月15日(水)

日本の安全保障ー「力の時代」の道は
敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有や防衛費の大幅増は、戦後の安全保障政策を大きく変える。ロシアによるウクライナ侵攻の衝撃で、次は「台湾有事だ」として軍事力に頼る主張も聞こえる。「力」がもてはやされる時代に平和を保つにはどうしたらいいのか?2人の安全保障の専門家(日本国際問題研究所理事長・佐々江一郎氏、平和構想提言会議共同座長・川崎哲氏)のインタビュー記事を基に、日本の安全について考え、議論した。

 3月8日(水)

ウクライナ侵攻の行方ー専門家はどう見る
ウクライナとロシアにとっての戦争の出口は全く異なる。ウクライナも、昨年3月には停戦協議に臨んだが、その後、ロシア軍のブチャやマリウポリでの残虐な犯罪行為が明るみに出るにつれ、「ロシア支配下の平和はありえない」と徹底抗戦の姿勢が骨身に染みて固まったのだろう。これだけ犠牲を払わされたうえで不本意な終わり方をすれば、今の比ではない復讐心が生まれてしまう。それが避けられないからこそ、ウクライナが完全に納得するまで戦う以外の道はないと、改めて感じている(筑波大東野教授)。しかし、政治は共存を探る「可能性のアート」であり、戦争の出口はなければ困る。困難でも想像力を働かせ、時間を味方につけたり、仲介を考えたりと、色んな手を模索するべきだ。(遠藤東大教授)

 3月1日(水)

①日本銀行総裁ーポスト黒田に驚き②防衛費増額決まったがー防衛費増額をどう考えるか
政府は黒田日銀総裁の後任に、経済学者の植田和男氏を起用する方針を固めた。学者出身総裁は戦後初めて。新体制では当面、緩和を維持しつつ、日本経済の状況をみながら正常化の道を探っていくとみられる。②防衛力の協会に向け、政府は今後5年間の防衛費を従来の1.5倍に拡大すると決めた。3名の識者(社会活動家・石山アンジュ氏、経済評論家・加谷珪一氏、歴史学者・山田朗氏)のインタビュー記事に基づき、防衛費増額についてどう考えるか議論した。

 2月22日(水)

①ミャンマー「非常事態」半年延長、長引く国軍統治、離れる民意②フィリピン、米軍の駐留拠点増加、国防長官訪問し合意
①クーデターから2年経た2月1日、国軍は全権掌握の根拠とした非常事態宣言の期間を、半年間延長すると発表した。ミャンマーでは、民主化や市場経済化などの改革は頓挫し人々の生活はh困窮しつつも、市民による激しい抵抗運動は継続している。米国は台湾有事も視野に、同盟国との連携強化を急ぎ、フィリピンでは2月2日、米軍の駐留拠点を拡充することで合意した。ただ、中国の経済的吸引力は強く、フィリピンの外交姿勢には揺らぎもみえる。

 2月8日(水)

​ゴルバチョフの「新思考」を見つめ直す
ウクライナ戦争で核の脅威と東西分裂が強まる中、核軍縮と冷戦終結を導いたゴルバチョフ元ソ連大統領の「新思考」は、今こそ見直されるべきではないか。ゴルバチョフ氏の報道官を30年間務めてきたウラジミール・ポリャコフ氏のインタビュー記事に基づき、相互の尊重、対話と協調、軍事力に頼らない政治を提唱したゴルバチョフの「新思考」について考え、議論した。



 

 2月1日(水)

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